一般社団法人 日本風力エネルギー学会

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カーボンニュートラル実現に向けた風力発電への期待と
日本風力エネルギー学会の役割


三保谷 明
(株式会社ジャパンウィンドエンジニアリング)

このたび、日本風力エネルギー学会2022-2023年度会長を務めることとなりました。風力発電、風力エネルギー利用に関する研究・技術開発の錚々たる先達より会長を引き継ぐこととなりましたが、新理事会のメンバーと協力し、会員の皆様とともに、風力分野の発展に取り組む所存ですので、ご指導、ご鞭撻の程よろしくお願い致します。


本年、設立45周年を迎える日本風力エネルギー学会は、風力エネルギー利用に関する基礎と応用について、国内外の研究者、研究団体との交流を図る国内唯一の学会であり、我が国の風力エネルギー利用技術に関するアカデミーとして活動を展開してきました。

一方、地球温暖化対策がグローバルな課題となる中で、2050年カーボンニュートラル宣言やグリーン成長戦略、第6次エネルギー基本計画の策定を背景として、洋上風力の大規模導入に向けた具体的プログラムが開始される等、風力発電を取り巻く環境は急速に変化しつつあります。またウクライナ侵略に端を発するエネルギー危機の顕在化は「純国産」再生可能エネルギーへの期待を増大させており、風力発電への国民的期待も高まりつつあります。


しかしながら国内の風力発電導入量は、若干向上しつつあるものの、国際的には依然として低い水準にあり、国内マーケットが成長しない状況から、国内全ての風車メーカーが大型風車の製造から撤退。風車製造に係るサプライチェーンも大幅に縮減し、今後風力発電が飛躍的な導入拡大を求められる中で、そのプレーヤーたる風力関連産業の育成が国家的急務と言えます。すなわち、国内風車メーカー・サプライチェーンの復活・拡大と風車メンテナンスに係る産業の育成、その最大の原資たる風力エネルギー利用の基礎・応用に携わる研究者・技術者の確保に向けた人材育成が、風力エネルギー利用技術に関するアカデミーの責務として、取り組むべき喫緊の課題と考えています。


我が国が目指すカーボンニュートラル実現には、洋上風力、大規模陸上風力と中小規模陸上風力、すなわち多様な風力発電の最大限の導入が必要であり、洋上風力に係る海洋・造船関連技術のほか、風車コンポーネント・部材、補修関連技術や系統連系に係る発電量予測、運転管理のデジタル対応技術等、多様かつ広範囲な技術領域へのアプローチが求められております。今期より本会理事会には、海洋・造船分野の研究者に加わって頂きましたが、今後、関連する学協会や研究者・技術者との連携についても、早急な具体化が必要と考えています。


また、全国各地の先進的な自治体が取り組み、民間事業者が導入拡大を進め、我が国風力導入の主役であった中小規模陸上風力の延命化やリプレース・拡張も、今後の風力発電の導入拡大には必須の領域であり、我が国の中小規模陸上風力に適し、海外メーカーではラインナップされない中型風車のサプライチェーン形成に向けた国内の技術資産・人材の確保、活用も検討すべき重要な課題と思います。


人材育成については、これまでも出前教室等の教材の整備やeラーニング等、要請への対応として検討されてきましたが、今後は、例えば官民協議会やJWPAの風力産業化戦略とリンクさせた具体的な目標設定、関係教育機関や風力導入促進地域の地方自治体等とも連携した組織的な取り組み等、能動的な取り組みについて、具体的な検討を開始したいと考えています。


また、本会初の女性理事が誕生し、全国各地の代表委員による人材登録制度がスタートしましたが、風力エネルギーに対する認知の拡大や新しい人材の確保、更には活性化の観点から、中学生、高校生等の若年層や女性層への情報発信、イベントや講演会、勉強会、ワークショップ、若手や各地域の研究者・技術者毎を対象とした小規模な研究発表会等、きめ細かい活動の展開も重要な検討課題と考えています。


こうした新しい取り組みはもとより、斯界では最も歴史のある学会誌「風力エネルギー」や今年で44回目を迎える「風力エネルギー利用シンポジウム」を通じての研究成果の発表、情報の提供、また最新の風力エネルギー技術に関する図書の翻訳や研究会の運営等、本会を支える様々な活動の拡充には、本会の財政基盤の強化・安定化と事務局運営の安定化・継続性の確保が必須です。先々代、先代会長のご尽力により、本会の財務状況は劇的に改善されてきましたが、今後は更に会費収入増に向けた広報活動の充実や、優秀な事務局人材の確保と事務局機能の向上が必要であり、より広い視野で事務局運営を見直したいと考えています。


風力エネルギー利用のさらなる発展に向け、また本会会員の皆様へのより充実したサービス提供に向け、率直に意見交換できる開かれた日本風力エネルギー学会を目指して参ります。会員の皆様の積極的な参画、ご意見をお願い致します。

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